佐渡=日本医療の未来
医療が届かなくなる島
それでも、いまも誰かを診つづける
新潟県・佐渡市。本土から海を越えたこの島では、高齢化が急速に進み、医療を必要とする人の数が年々増えつづけています。
しかし現場では、限られた医師とスタッフが、増え続ける声にならない「助けて」に向き合いながら、日々ぎりぎりの医療を支えているのが実情です。
過重な負担。途絶える担い手。そして、必要なときに、必要な医療が受けられない――そんな瞬間が確実に増えてきている。
それでもなお、島に残る医師たちは、この地域に生きる人のために白衣を脱がない。医療が崩れかけた島で、踏みとどまる覚悟が、いまもそこにある。

Q.なぜ佐渡へ行くことになったのですか?
父親の死をきっかけに新潟に戻った際、医師が足りないから数日だけでもと佐渡の知人から声をかけていただいたのがきっかけです。佐渡での生活は四季ならぬ五季を五感で感じることができ何よりも食が素晴らしく、島民の方には大変温かく受け入れていただく一方、少しの治療で改善する状態や慢性疾患が放置されている状況を目にし、この方々へ恩返しをするため自分にできる事を提供したいと感じ、気付けば早10年を過ぎていました。

Q.拠点は新潟市なのですか?
佐渡では週3.5日間、泊まりで医療を提供し過ごします。新潟市でも実現したい医療がありますので週末にかけて新潟に戻り医療介護を提供しています。一週は7日ですのでほぼ半々の二重生活ですよ(笑)。初夏早朝のジェットフォイルは穏やかな海面を滑るように進み気分はエグゼクティブ、冬の日本海の波間をカーフェリーで叩くように進む姿には勇ましさを感じ、気分はカニ漁師です。

Q.現在佐渡の医療はどのような状況ですか?
私の感覚ではすでに崩壊に至っております。島内基幹病院は時折入院制限がかかるくらい手一杯で、地域では高齢化による運転免許返納により今までの医療機関を受診できなくなる例が多くみられます。また遠くの専門医を受診できずに諦めている方も多数みられます。原因の多くは医師を含む医療従事者不足ですが、そのワーストを争う新潟県において、佐渡市さらに私の勤める南部小木地区はその最たる場所で、小木診療所もへき地診療所として許認可をうけております。

Q.佐渡の医療を守るために必要なことは?
ずばり、かかりつけ医機能の強化と医療介護連携だと思います。基幹病院が機能しやすいようにかかりつけ医はcomon diseaseと言えるような慢性疾患や整形外科的疾患くらいは科を超えて診るべきでしょう。これは私が以前、東京都小笠原村父島でへき地島医療に従事していた時に身に着けた感覚で、小木診療所での原点になっております。また、個人に関する医療介護情報が島内で共有され、一つの医療機関であるかの如く形成されるべきだと思います。これは少しずつ動き始めているようで期待しています。

佐渡・小木診療所の診療体制と取組
佐渡・小木地区では、島民の皆様が日頃の健康管理や初期診療を受ける小木診療所が、地域医療の入り口となっています。より専門的な検査や治療が必要になった場合には、地域の基幹病院である佐渡総合病院が中心となり、高度な医療を提供します。佐渡総合病院は、他の診療所や医療機関とも連携し、患者さんの状態に応じた適切な医療を提供できるよう努めています。また、治療後の状態が安定し、継続的な医療やケアが必要な場合には、再び診療所に戻り、地域での療養を続けることができます。
在宅での医療や介護が必要な場合には、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所が連携し、患者さんの自宅での生活をサポートします。これらの機関は、地域包括支援センターとも連携し、医療、介護、福祉に関する様々なニーズに対応できるよう情報共有や調整を行っています。救急の場合には、佐渡消防本部が迅速に対応し、患者さんの状態に応じて佐渡総合病院、または必要に応じて新潟県内外の高度医療機関へ搬送する体制が整っています。
このように、佐渡地域では、それぞれの医療機関や関連機関が緊密に連携し、島民の皆様が安心して必要な医療を受けられるよう努めています。
行政・医療関係者の皆さまへ